すべての音楽にはテンポが重要

その音楽を司る最も根本的な要素として、「テンポ」があります。テンポはそのアンサンブルがどのような時間軸を共有するかの「核」です。それぞれの音符が、それぞれの演奏が拠り所にするための軸となるもの、それがテンポです。

テンポから曲を考えることもあるほどです。音楽を創るときに、時には「どのような場でどのような人に、どのように聴いて欲しいのか」を考えることもあります。そのような時に「テンポ」を考えることで、その曲の「ノリ」が決まるといってもいいでしょう。曲の中で縦横無尽にテンポを変えることもあります。そのような演出は多々あるものなのですが、どうしても人は一定のテンポが正確に刻まれている方が安心するようです。次の音がいつ「鳴る」のか、とくにダンサブルな曲であれば、正確なテンポを維持することは最も基本的な姿勢です。

人が「ノリ」やすいテンポというのは、どうやらBPM140~155あたりのようです。もちろんその曲にもよりますが、その曲がテクノであったりクラブやダンスフロアで流れることが前提である場合、その付近のテンポを選択することがもっとも望ましいでしょう。また、人に「安心感」を与えたりするのはBPM120ではないかと思います。それは時計の秒針の倍のスピードのテンポです。1秒という長さは、世界が共通してもつ「テンポ」です。その倍であるBPM120は、最も人に馴染みやすいテンポであるのではないでしょうか。私たちは毎日時間に左右されて生きています。その時間を区切ったときの最も基本的な単位、「1秒」は、私たちが生まれてから死ぬまでずっと付き合い続けるテンポです。

テンポだけでもこのように深く考えることが出来るのです。そこにアンサンブルを重ねれば、もっと深いものになります。そのテンポはそのテンポである理由があるのです。理由がなければいないのです。テンポを維持するのが難しくなるのは「生演奏」の時です。バンド形態である場合、そのテンポを司るのは「ドラムス」です。ドラマーがしっかりとしたテンポをキープしなければ、アンサンブルは間違ったテンポに突き進むことになります。演奏している際、テンションが上がってしまうとテンポも上がりがちになります。ですが、それは「聴いている側」からすると違和感のあるものになってしまうこともあるのです。

演奏者とリスナーが気持ちを同じにしている状態というのは理想ではありますが、すべてのシーンにおいてそういうわけにもいかないものです。

テンポをカンガルことは音楽の根幹を考えることです。その音楽をどのような時間軸で展開するのかを考えることです。テンポはその音楽の中の「時間」なのです。私たちの世界の「1秒」を決めるかの如く、音楽のテンポを考えましょう。1秒の長さがバラバラになってしまうと、社会は破綻します。テンポがバラバラになると、その音楽が破綻するのです。

それほどまでに重要なテンポですから、アンサンブルにおいても各人がナーバスになるくらい意識してもいいのです。最も大切にするべきテンポを、アンサンブル全員で共有すること。それが合奏、アンサンブルの基本です。テンポを大切にすることは、音楽を大切にすることでもあるのです。

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