「キー」とは

定められた12音階は、そのまま並べるだけではまだ「曲」にはなりません。特に現代のポピュラー音楽においては、ひとつの曲のなかで12音階すべての「ノート」、つまりすべての音を盛り込んだような曲は見当たりません。12音階がすべて自由に使えないかといえば、それは創作者や演奏者の自由ではあるのですが、その12音の中からさらに体系をたてて7つの音を選び、一定の法則で配置したのが「キー」です。

「キー」という言葉は近年では馴染みのある方も多いのではないでしょうか。「カラオケ」
歌う際に調整するのも「キー」です。ここで述べる「キー」も、それとまったく同じ考え方です。ポピュラー音楽においてはキーは大きく2つに大別されます。それが「メジャーキー」と「マイナーキー」です。これは少し聞いたことがある人もいるかもしれません。具体的には、「ドレミファソラシド」の並びが「メジャーキー」です。これは日本ではもっとも有名なメジャーキー、Cメジャーです。学校教育では「ハ長調」と呼ばれたりもしています。

学校教育でなぞるのはある程度の「楽典」です。音楽を世界どこでも通じる共通語として捉えるためには、これらのある程度体系をたてられた知識が必要です。「ただ自由に音を並べました」という音楽は、それを理解できる人がいればいいのですが、ほとんどの人が「子供のいたずらのようだ」としか感じられません。それは世の中にあふれる音楽がこの「キー」という考え方をある程度踏襲したものであり、私たちもそれを感覚的に理解しているからです。ですからキーから外れてしまうと「音痴」と直感的に感じることになるのです。

この「ドレミファソラシド」の並び方は、「長調」の基本です。ドとレの間には、鍵盤であれば「黒鍵」が挟まります。ドとレの間の音の「インターバル」を「全音」と呼びます。レとミの間にも黒鍵があります。ですが、よく鍵盤を見てみると「ミとファ」の間には黒鍵がありません。「ミとファ」の間は「半音」のインターバルなのです。白鍵と白鍵の間すべてが全音であれば、実は世の中の音楽は実につまらないものになってしまうのです。この12音階の中のこのインターバルのルールが、世の中にさまざまなキーを生み出し、「マイナーキー」という概念とともに音楽のバリエーションと可能性を一気に押し広げた存在なのです。

すべての「ノート」のインターバルが「全音」だけであれば、世の中の音楽はここまでは発展できなかった可能性があります。それはどの音からどのようにスケールが開始されても代わり映えせず、また「マイナーキー」、つまり「短調」の存在すらなかったとかんがえられるからです。短調は、「ドレミファソラシド」を「ラ」から始めたキーです。メジャーキーに比べて「暗い」、「悲しい」、イメージが持たれることの多いキーです。マイナーキーは「ロック音楽」などでは当たり前のように用いられるキーであり、音楽のバリエーションを豊かにした大発明でもあります。それも12音階の分け方、そしてそれらの「並べ方」ひとつで実現できたものであり、これらのルールはすべての音楽においてまるで「教典」であるかのような存在です。だから「楽典」と呼ばれたりするのでしょう。

↑ PAGE TOP