楽器を演奏する人に必要なこととは

楽器を演奏することは音楽に対する取り組みの中でも最も基本的で根本的なものです。楽器の演奏の積み重ねが「アンサンブル」であり、「音楽」そのものといってもいいでしょう。その楽器の演奏単体で成立する音楽もあれば、他の楽器との融合を果たして初めて意味を成す楽器もあります。

楽器を演奏するということは、音楽をこの世の中に解き放つことと同じです。音楽を演奏することは、私たちが生きてる空間に「音」を放つことなのです。放たれた音は空気を伝わり人の耳に届きます。演奏者自身の耳にも届きます。そのようにして人に認識されて初めて「音楽」になるのです。それが生演奏であれ、録音するのであれ、楽器を演奏する時はタイムラインに沿って音楽を作っていることと同じなのです。

楽器の演奏は多かれ少なかれ「体」を使うことです。ただ念じるだけで音が出るようなことはないのです。自分自身の体の動きが「音」に転嫁される。自分自身の考えたこと、そして感覚から発せられる「動き」が、「音楽になる」のです。楽器を演奏するということは、「自分自身が音楽になる」ということなのです。音楽になった人は自分自身でもその音楽を楽しむと同時に、人に対してもその音楽の素晴らしさを「伝える」必要があるのです。

音楽は楽しいものです。楽器の演奏を通じて音楽に触れたとき、人は「音楽の虜」になるといってもいいでしょう。楽器の演奏は、無限の可能性である音楽をこの世に具現化する神聖な行為なのです。
世の中にはさまざまな楽器があります。その楽器によって出せる音、できること違います。ですから、「その楽器の立ち位置」というものは自然と決められているのです。アンサンブルの中で自分が担当する楽器がどこに位置しているのか、どのような演奏をすればいいのかということは、あらかじめ定められているといってもいいでしょう。「楽器の演奏」は、そのように音楽を「包括的に捉える」ということも必要です。

さらに「演奏する」うえで大切なことは、アンサンブルのタイムラインに沿うということです。「ピッタリとあった演奏」がまずは基本です。アンサンブルでは、人がそれぞれ持つ独特のタイム感、つまりテンポカングルーブ感といったものが大切です。「息がピッタリとあった演奏」でも、そこには独特のズレがあるものなのですが、それは自然と生じるものです。最初から「崩してやろう」と考えてしまうと、とても聞けたものではないどうしようもない演奏になってしまう場合がほとんどです。そのようなことになってしまうと、「音楽」は死んでしまいます。

楽器を演奏する際には、楽曲のタイム感をしっかりと捉えることがまず大切です。人はコンピューターではないので、寸分たがわぬ演奏というのは無理なのです。どこまでも正確に演奏しようとしても、そこにはその人独特のグルーブが生まれるものです。楽器を演奏する上での最低限の責任は、「正確であること」です。それを念頭において、この世に、空間に、音楽を解き放つのです。自分の演奏で人が感動する、楽しんでくれる、ということは一生忘れられない快感になるのです。音楽の演奏を通じて、真の音楽の楽しさ、素晴らしさを感じ取ることが出来るでしょう。

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